Pinduoduoの副社長が語る、わずか5年で中国トップクラスのEC企業になった秘訣

多くの人は、Pinduoduoがどのようにして、新興企業から、わずか5年で上場した公開企業に成長し、EC分野で中国のトップ企業の1つになったのかを不思議に思っています。その答えは、巨額の資金と積極的なユーザー還元、通称「チャイナ・スピード」だけではありませんでした。

競合他社が残してきた最も困難な問題に取り組むという、同社の強い意志が大きな要因としてあります。販売チャネルを再構築し、生産者やメーカーと直接協力してゼロからブランドを構築するというスマートな戦術が真の鍵を握っていると、Pinduoduoの陳秋氏は語っています。

Pinduoduoは「より手頃な価格で、より楽しく」というブランドを掲げ、同社の安価な商品やSNSを利用したグループ購入型のショッピング体験を楽しむ、大規模でロイヤリティの高い顧客層を築いてきました。陳氏は、同社が生き残るためには、既存の競合他社よりも高いコストパフォーマンスを顧客に提供する必要があることは、当初から分かっていたと述べています。

しかし、少なくとも中国が得意とする軽工業製品のような従来型の商品選択の場面では、それは容易なことではありません。その代わりに、Pinduoduo はこれまでEC産業が参入することが難しかった分野、すなわち農業分野に進出しました。

陳氏は、他のEC企業が農業分野に参入することを困難にしている3つの特徴について述べています。

1つ目は需要側の問題です。通常、顧客はこういった商品を検索しません。若い人の中には、好きな果物の名前すら知らない人もいます。また、人々はすぐに消費するために商品を購入する傾向がありますが、フルフィルメントと配送時間を考慮したオンラインショッピングでは、半計画的な消費に変わってしまいます。「農産物をオンラインで買わせるということは、本質的に購買習慣を変えさせることになります」と陳氏は述べています。

2つ目は、サプライチェーンとプラットフォームにあります。農家には、より良い場所で競争し、より多くのトラフィックを購入するための予算がほとんどありません。そのため、Pinduoduoは農業分野に深く入り込み、生産者との緊密な関係を築き、地域のチャネルを選定し、サプライチェーン全体の効率を最適化し、農業ビジネスに参入する必要がありました。

手始めに、Pinduoduoは農家の参入障壁を取り除くために手数料を削減しました。設立から5年が経過した現在も、その傾向は変わっていません。また、同社は生産地に深く関わり、何を植えているのか、生産サイクルはどうなっているのか、生産者はどんな問題に直面しているのかなどの情報を直接得ることで、知識を得て、生産を予測することができるようになっています。

一番重要なことは、Pinduoduoの販売プラットフォームの最適化に向けたデータ活用です。陳氏によると、同社はアルゴリズムを使用して、最もコストパフォーマンスの高い商品リストを見つけ出し、収集したデータを使用して、最も可能性の高い顧客と自動的にマッチングさせることができるということです。陳氏はこれを「分散型トラフィックルーティングシステム」と呼び、生産者はより良い製品を提供することに集中でき、競争のために高い料金を支払う心配がなく、Pinduoduoからの価値のあるトラフィックを獲得し続けることができると言います。

陳氏はサミットで、Pinduoduoの名前の由来であるソーシャルネットワークベースのグループ購入機能は、当初、アプリやウェブサイト上で農産物をよりアクセスしやすくする必要性に合わせて開発されたものであると語りました。全国に細分化されていた規格外の農産物の需要をグループ化し、より身近な需給を実現しています。

Pinduoduoによると、その結果として、これまで農家は売れ残りを心配していましたが、Pinduoduoの顧客からの大量の需要により、安定した注文の流れが生まれ、個々の産地の旬の生産能力を数日のうちに消費することさえ可能になるほどの大きなものになっていると言います。

2019年には、Pinduoduoでの農産物の年間商品価値は1364億元に達し、中国で最も広範な農産品のプラットフォームとなった。同年、約1,500個の個別農産品が10万件以上の受注数を達成しました。

農業関連の売上高は常にPinduoduoの総商品価値の14%を占めており、他のECサービスの平均1~3%よりもはるかに高い水準にあります。Pinduoduoは他の分野での競争に敗れたとしても、農業分野では競合他社の手が届かないほどの地位を確立しています。

産業分野でのチャンスが訪れたとき、生産者との仕事で得た経験が再び活かされました。「多くの方はご存知かと思いますが、私たちの基本的なロジックは、まず需要を破壊して供給側を破壊することです。私たちは農業で安定した成長を実現しました。同様に、同じロジックとアイデアを活用出来る広大な未開拓分野を発見しました。」と陳氏は言います。

それは、中国のメーカーの生産力が強く、総合的なコスト優位性が他の追随を許さないこと、そしてまもなく米国を抜いて消費国トップになるかもしれない中国という国に供給出来るというポジションにあることです。しかし、多くの中国メーカーは、海外ブランドのOEMに甘んじてしまい、わずかな利益しか稼ぐことが出来ていません。

これはPinduoduoが農業に参入した当初、デパートやスーパーを中心としたチャネルに高額な出展料を払って出展してたのが、後にECプラットホームにも同じようなロジックで出展していたことと似ています。国産ブランドで有名になったものが少なすぎたのです。国内ブランドをゼロから構築することはますます難しくなっており、Xiaomiのように多額の資金を必要とすることも少なくありません。

Pinduoduoは、顧客から集めたデータを分析することから始めました。例えば、特定の色やデザインの靴をYの価格で探している人がX百万人いて、それが見つからなかったり、安いAirPodsを探している人が何百万人いるように見えますが、どれも実際には見つけて購入することは出来ません。Pinduoduoは、これらのデータ(他にもたくさんのデータがあり、トラックの中にたくさんの箱を入れるための最適な梱包サイズなども含む)を持ってメーカーに行き、研究開発の不確実性を最小限に抑え、コストを削減し、需要と供給をマッチングさせることで最適解に近づけています。

陳氏によると、同社は多くのカテゴリーで試行錯誤を重ね、予想以上の成果を上げたと言います。ティッシュ部門では、Kleenexなどの有名ブランドのOEMと共同開発したブランドがPinduoduo上で大きな売上を達成しただけでなく、他のECサイトでもトップセールスを記録しました。Pinduoduoで育成したブランドの多くは、数百億円とまではいかないまでも数十億円の年間売上高を短期間で獲得し、COVID-19パンデミックの影響で世界的に受注が低迷する中、これらのメーカーの生き残りを大きく後押しました。

Pinduoduoは今後5年以内に更に優位性を拡大し、少なくとも5,000社のメーカーと協力し、消費者データを利用してカスタマイズされた10万点の製品を発売し、さらに15兆円の市場価値を創出することを計画しています。

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